カーテンが必要になった。周囲に家がないので、別になくてもいいかと思っていたけれど、田舎の夜はなかなかの漆黒で、外界を隔てるカーテンはあってもいい気がした。真っ暗というのは想像をかき立てる。それでも構わないときもあれば、不気味に感じるときもある。
横浜のそごうへ行った。ブランドによってはネットでは買えない。たぶん質のよいものほどその傾向がある。金は潤沢にはないけれど、カーテンは何年も変えないだろうから、少しいいものがほしい。
お店には想像を絶するほどの数のカーテンがあった。カタログと実際に見る印象はかなり違う。さらに、カタログの写真はアルハンブラ宮殿みたいなところで撮っているので、自分の家でどう見えるか、心象のなかでブレークしなければならない。
店員さんが積極的に話しかけてくるのと、大量の商品を見ていたら疲れてしまった。近辺のタイ料理屋で、タイ風カレーラーメンという不可思議なものを食べた。隣席のガタイのいい白人男性と肘がぶつからないようにするのに気を遣う。味はおいしかった。
お昼を食べてから店に戻った。何度も出たり入ったりしていた。たくさん見ていると自分の好みがかえって分からなくなる。フィッシュバッハはかっこいいけれど、家にあってどのくらい存在を主張するのか(いかにもしそうな感じがする)。川島セルコンは正当的に過ぎるか。
いくつも見てからニーディックというブランドのカーテンにした。値段表の見方を間違えていて、予定より安かった。高さ3m、幅2mくらいの窓で10万円弱くらい。相場は判然としない。たぶん人生で何度かしか買わないから。ただ、予算よりは安くなったので、気を良くしてタッセル(カーテンを止めるもの)も買った。ふさふさしている。
いつかはフィッシュバッハのカーテンをかけてみたい気もする。イメージで言うと、若くして成功したハリウッド女優が、暖炉の前で白い毛玉みたいな猫を撫でながら、大振りのグラスでブランデーを飲む、その後ろにかかっていそうな感じだ。
今のところ、どれも持っていないし、手に入る見込みもない。白い猫が一番現実的かもしれない。暖炉は建築許可の関係で、直火の設備は設置できないそうだ(ハリウッドではできるのだろう)。残念。カーテンが届くのを楽しみにしている。