自性の消滅

たまに仕事の帰り際に酒を飲みたくなるけれど、急に誘って都合が付きそうな人があまりいない。ぱっと思いついて飲みたいと感じる人は、多くの人にそう思われているわけで、そうすると当日には先約があるだろうと躊躇する。たぶん実際にそうなのだ。

先週末は珍しく、飲みたいときに人を誘う気になり、相手も空いていた。ただ酒を飲むだけなのに、このように複数の偶然が重なっている。誰でもそういうものなのだろうか。

 

酒はなんだかわからない「メガ酎ハイ」を頼み続けた。純粋な酎ハイらしい。味付けがされていない。明晰な純粋性の定義。

 

店を出て、まだ早い時間だったのでその辺をウロウロした。知らない道をまっすぐ行こうかと思ったけど、じきにそこは根岸線に並行する道だと気づいてしまう。

 

進入禁止と書かれた立体駐車場に迷い込んで出られなくなった。ホテルの外観がなんだか懐かしい気がして写真に撮る。山の上から町を見下ろす。すべて見たことがあった。その日見るものはすべてが想定の範囲内で、あらかじめ知っていたとさえ言える。

 

耳慣れないものはどんどん減っていく。だけどそれなりにはちゃんと楽しい。