1リットルビール

酒を飲みに行き、ビールなら大きいサイズが得だと言われたので頼んだ。1リットル以上あるビールが千円ちょっと。それが安いのかどうかはもはや分からない。想像を絶するサイズだった。そもそも通常のビールとは、どのくらいの分量でいくらくらいするものだっただろう。とにかく重かった。急いで飲んでいるうちにマシになっていく。手首への負担が、減る。ビールだけでは足りなくなって白ワインも頼んだ。なぜそんなものを頼んだのかは思い出せない。ビールとワインで2リットルくらい飲んだと思う。たびたび考えるのだけど、たとえば自分の目の前に、2リットルのポカリスエットのペットボトルがあって、2時間で飲むかというと、おそらくそんなことはしない。なぜ酒だと飲めるのか。なぜ飲酒中の話はおかしな方向に行って、妙に小難しい内容になっていくのか。正面のテーブルでは不思議な髪の色をした青年が、頭を振りながら一生懸命しゃべっていた。反省が必要だった。反省が必要ない飲酒を最近知らない。なんてことだ。

 

川上弘美「どこから行っても遠い町」

どこかの街(商店街)を中心に、いろいろな人たちの視点で語られる短篇集、というよくある小説なのだけど、登場人物にほとんど感情移入することができない。感情移入というか、少し変わっているけどそういう人もいるだろう、という気持ちにもなりにくい。そういう意味で新しくおもしろい短篇集だったかもしれない。

 

藤野可織「いやしい鳥」

「爪と目」で何年か前に芥川賞を取った人のデビュー作らしい。おもしろかった。語り手、語られる人、出来事のすべてが明らかに狂っていて、でもたまに理性を覗かしたりするので、どこまでが現実なのか分からなくなる。人の家のインコを生で食べて、自身がインコになっていく呪い、文字で書くとアホみたいだ。名作だった。

 

寒い、とにかく寒い。何日か前に春が来たと思い込んでいた。スーパーでは鬼と豆が一緒に並んでいて、立春とか言ってたはずだ。騙された気分になる。数週間したら引っ越す。引越し屋には、本は重く、値段も上がると言われた。段ボールに詰め過ぎないようにと。詰め過ぎないどころか、準備などなにもしていない。