木を切り倒すその人の話を聞いてみたい

老人が迷子になると町内放送が流れる。どこから聞こえるのかと思っていたら、ちょっと先の角くらいのところにスピーカーがあった。発見されても放送がある。良かったねと思う。たまに発見の放送を聞きのがす。きっとだいじょうぶ。

 

月曜日

上から、消費者金融消費者金融、ラーメン屋、地獄。

 

仕事の現場がある平塚に行く。平塚は通っていた高校があった街で、今でも愛着を感じる。いつもは仕事の話しかしない建築士さんから、空いた時間に個人的な話などを聞く。娘がマイクラに夢中で、少し一緒にやったらしい。やはり一風違うものを作ったということ。普段からこんな無駄なようなやり取りができてもいいと思う。そのときは生産性とかは忘れて。

 

帰りみち、ラーメンを食べようと思った。たまに食べたくなる。家の近所に有名なラーメン屋があるのだけど、店先まで行ったら定休日だった。タイミングが合わない。近くの別の店に行く。全部のせを注文。じゅうぶんに美味しい。有名店は次の機会にする。

 

火曜日

仕事から帰ろうとすると雨が降っていた。傘はない。そういうとき、毎日天気予報を見てから家を出ようと思う。そしてしばらくすると忘れる。ポンチョみたいなコートに多少の撥水機能があったようであまり濡れずに済んだ。ポンチョてなんだっけ。

 

水曜日

前にいた部署のメンバーで集まろうという話になる。連絡してみると2人が今月で退職予定だった。ぎりぎり。退職後でも参加するということなので連絡先を教えてもらう。

 

昼、同期と外で食べる。私生活でしんどいことが多くてやけ酒や不摂生に逃げがちだという話を聞く。心配する一方で、昔のヤンキーがどうせ俺なんて、と言ってシンナー吸ってた感じかなとも思う。少し話が逸れる。そんな感じと言って笑う。

 

木曜日

「仕事」「やる気」などのワードで検索している。そのこと自体がすでにやる気のない感じを漂わせる。勤勉は倫理とすり込まれた世代。

 

サリンジャー「このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる」を読む。「キャッチャー・イン・ザ・ライ」のホールデン・コールフィールドの前日譚や後日の話など。とても繊細。ある種の人は心のなかにホールデン君がいて、思春期特有の潔癖や苛立ちが、気づくと内心から語りかけてくる。仲良くするしかない。

 

金曜日

後輩と昼を食べに行く。後輩の何人かは誘うと、行きたいです、みたいに返してくれる。世間では模範的な返答が共有されているのもしれない。確かに嬉しくなる。昼食と酒の量に気をつけて5キロくらい体重が減ったと言っていた。なのに何を食べるか話していたらトンカツになった。太るものはおいしい。奢ると昼でも3千円かかる。諸物価の高騰。

 

土曜日

市営プールに行く。クロールを教えてもらう。少しうまくなったと褒められる。少し。本を読んで、ジャガイモを植えようか迷い(雨なので中止)、そうしたら夕方になっていた。隣の山林では男2人が一日中木を切っている。最近和解した親子らしい。知らなかった。あらゆる場所に、あらゆるストーリーがある。だけど大体のことを僕たちは知らない。