一貫した斜め 『中原昌也の人生相談』

中原昌也の書く本は筋書きがわからない。断片みたいな文章がずっと続く。どこまでが一連のプロットなのかも不明だ。でもとても面白い。インタビューを読むと、「文章に意味はない」「解釈はすべて誤解」「書くのが苦痛でしょうがない」などと言っている。

 

結果、ますますわからない。聞かれたことに真摯に答えているようにも見える。たぶん世間とは大分ずれている。

 

そういう人が人生相談を受ける。その意外性が狙いなのだろうけど。割とまともに答えているものも多い。そうでないものもたくさんある。

 

今の自分に満足してる人なんているんですか?誰ですか?叶姉妹ですか?

 

叶姉妹が実際に人生に満足しているのかは知らないけれど、なんとなくイメージはできる。

 

荷物が多いという人には「誰かの部屋に本がないと不安になる。その人の内面がわからないから」と答え、職場の飲み会が苦痛だという人には、「この人は自分のなかに確固たる自分があると思っていて、はみ出すのが嫌なのだろう。それなら相談なんてせず、気を遣わず断ればいい」と返す。

 

新しい人生相談だった。読み物みたいで、相談者よりも、読者全体に向けて書かれている気がする。続刊があればいいのに。あと、各ページで映画が紹介されていて、久しぶりに何か観たくなった。