築60年アパート

職場で少し違う仕事をしている、あまり要領の良くない人が、相談する相手がいないと僕のところに来る。僕は人当たりがいいようで、ミスが生じた理由を調べようとか、対応案を考えようとか、当面の仕事以外のことを言う癖があるので、いくらか辟易させたかもしれない。今後、同様の話が来るかでその辺はわかる。ただ、その部門の人たちは忙しいのか、明らかにギスギスしていて、今は話を聞けない、など言明している。僕が何をしようとしばらく相談が来る気もする。

 

対応案の推敲を繰り返していたら若干の残業になった。どちらにせよ早い時間には帰れないので、遠回りして歩いて帰った。山下公園、元町、石川町を歩く。途中、元町と石川町は道路一本を挟んで露骨に趣を変える。石川町駅の圏内に入ると、元町の気取った雰囲気が消え、ゴチャゴチャした店が増える。目利きの銀次の看板がまぶしい。店名は聞いたことがある。

 

誰も住んでいないような、築60年とかであろう木造アパートの横を通る。廃墟かと思って写真を撮っていたら、一部屋明かりがついていた。いつから、どういう人が住んでいるのだろうと思う。そのアパートが住人でいっぱいで、週末になると子供が騒ぎ、活気が過ぎるくらいの頃があったのだろうか。今は令和5年の10月。誰もそんな先の未来のことは考えなかった頃。