横須賀のパブ、「ワインズバーグ、オハイオ」

出張で横須賀に行った。横須賀中央駅から、栄えてる方とは逆に歩く。人は少ない。たまにいても高齢の人で、後ろを歩くと結果的に自分もゆっくり進むことになる。景色を眺める。南国っぽい街路樹が植えられている。ソテツや背の高いヤシみたいな植物。ヤシみたいな植物は、下を通ったときに砂利くらいの果実がバラバラ落ちてきて頭に当たった。びっくりした。びっくりしやすい。

 

仕事が終わってからは、意味なく隣の堀ノ内駅まで歩いた。特に何があるでもない住宅街だった。横須賀は人口のわりに平野が少ない。家が隙間なく建っている。細い道に沿って古い家が並び、たまに何件かの単位で似たような家並みが造成されている。人が減っているとは言え、まだまだ平野は足りないのだろうか。すごく古いパブ的な店が並んでいた。人見知りゆえの怖気で、パブには入ったことがないけれど、パブ的な店の外貌は好きだ。

 

帰りの電車で、座席を広く使う老人に中年女性が激昂していた。どっちもどっちではあれ、嫌いなのは中年女性のほうだなと思った。

 

シャーウッド・アンダーソン「ワインズバーグ、オハイオ」を読んだ。何度も読み返している。100年以上前の、アメリカの田舎町の話。たくさんの人が出てくるけど、ほぼ全員が貧しくて世間との折り合いもつかない。そういう人間の、限りなく繰り返すような日常のなかの、ちょっとした輝きとか失意とかが描かれる。それは愛情に近いもののように感じる。