庭の小川

職場で異動があった。俄かに忙しくなって、けっこう遅くまで残業したりしている。残業なんてほとんどしたことがないから、妙な気分になる。世の中に馴染んでいるような。錯覚。

 

この1年くらい眠れなくて困っていたのだけど、仕事が暇なので現実的な問題は少なかった。朝にいくらか眠たい程度。ところが、やることがたくさんあると、睡眠不足は実際の作業効率などに影響を生じさせる。枕元のスマホに目をやると、3時になっていたりする。解決策は今のところない。

 

職場でたくさんの人に異動したと挨拶した。人間関係が苦手だと思っていたけれど、伝えておく人を思い浮かべると結構いた。思わぬ人から連絡があって、昼を食べに行く話になったりもする。相変わらず働きたくはないけれど、そういう関係性は得られた。

 

今日は土曜日。前日からの雨で、庭に小川ができていた。すり鉢に例えると、当家はその中途みたいなところにあるので、高地に振った雨水がしみ出ているらしい。雨がやんで、晴れても小川はそのままだった。澄んだ水が、外構工事で入れた枕木の間の土を流していく。肥沃な土壌を運ぶナイル川の氾濫のよう。

 

近所にネパール料理屋がある。住宅街を歩いて30分くらい。住宅街は40年ほど前に開発されたらしい。今は古い家と新しい家が混然としている。たまに空き地もある。道路はたぶん必要以上に広い。庭のつくりは家によってかなり違う。家よりも、庭に対するほうが、人の考えは多様なのかもしれない。

 

ネパール料理屋は照明が暗めで、落ち着く感じだった。開け放しのドアからは道路が見える。通る車は多くはない。食後にビールを頼んで本を読んだ。客はほかに2組しかいなかった。皆が静かな声で話している。

 

帰りも歩く。住宅街は夜になっていた。家に着いても小川はまだ流れていた。