午後のサッカー、「深い河」

新宿方面へ行く。遠出が苦手なので滅多に行かない。土曜日の昼頃で、空いていると思った電車は人でいっぱいだった。これだけの人がどこへ行くのだろう。新百合ヶ丘あたりでさらに混み合って、そこからは本を読むのも難しくなり窓の外を見ていた。

 

隙間なくたくさんの家が建っている。ほとんどが一戸建て。広くはないけれど、きっと土地も高い。たくさんの希望や失望や喜びなどを集めて、街全体が飽和しないのだろうか。電車はどんどん都会の度を増していき、一戸建てより集合住宅が増えていく。

 

新宿で電車の乗り換えてJRで千駄ヶ谷まで向かった。天皇杯の決勝があった。チケットを余らしたという友人に誘われた。6万人以上の人がいたらしい。サッカーはわからないけれど、重要な選手は聞いてきた。柏レイソル側の席だったのでなんとなくレイソルを応援する。延長までもつれ、PKも10人目まで蹴って負けてしまった。

 

間近で観るサッカーは意外におもしろい。雰囲気もあると思う。牧歌的な気候、応援の高揚、スタジアムの端から見る空、売店のビール。試合が長引くにつれて空はどんどん暗くなり、上空を頻繁に、思いのほか低く飛ぶ飛行機も見えなくなった。お祭りが終わる。

 

夜からは高校時代の同級生と会う約束があったので急いで帰る。新宿駅は帰りも混んでいた。

 

高校時代の友人はあまり変わってなく、体型の維持等頑張っているのだろう。立派なことだと思う。進学校だったこともあってか、あまり踏み外したことを言わず万事においてそつがない。スマートなのだ。けっこう酒は飲んだ。当たり前だけど、古い友達がこれから増えることはないと最近はよく考える。

 

 

「深い河」 ー 遠藤 周作

人生のままならなさ、苦悩や失望を宗教がどのように癒すことができるか。宗教を失った日本人と宗教性のかたまりのようなインドのガンジス川。小難しい小説のようだけど物語としての面白みもある。なかに1人、自己の空虚や偽善への嫌悪を、他人への苛立ちに転嫁する登場人物がいる。自分の中にそれを補完するものを見出せない。宗教性の喪失は現実をかなり厳しいものにしたのだろう。