石を拾う、「ノクターナル・アニマルズ」

庭の石を拾った。庭一面に石が落ちている。アスファルトの細かいものに見える。荒涼とした雰囲気を出して見苦しいなとずっと思っていた。途中から子供も手伝ってくれたけど、なかなか無くならない。石が地中から生えてくるようだった。けれどあらためて遠くから見ると確かに減っている。あと何回かで無くなるだろう。何回かは必要。

 

トム・フォード監督の「ノクターナル・アニマルズ」を観た。冒頭の犯罪の暴力シーンがかなりきつかった。元妻の裏切りを小説の残虐さで告発するという筋なのだろうか。カトリックと中絶の話など、かなり重い、記憶の底に沈んだ罪の意識が断片的に描かれる。見る側には罪の意識とその告発が明確な連想として語られるけど、作中の人物の目で見れば違うかもしれない。罪の意識を表面では否定しつつ苦しんだラスコーリニコフのように。あるいは、作中の犯罪者も、自らの悪行を正当化するようことを言う。下意識が反逆する。主人公は「復讐」と書かれたアートワークを自ら購入したことを忘れている。

 

以上の解釈が正しいのかはわからない。犯罪シーンがあそこまで綿密でなければとも思うけど、そうでないと成立しない映画でもありそう。グッチのデザイナーだった人と同名の監督と思っていたら本人らしい。それもまたすごい。