栃木旅行(館林市、足利市、佐野市、栃木市、日光市足尾)

職場の後輩と昼を食べていてどこかへ行こうという話になった。「どこか」はどこでも良くて、ただ日々の変化が重要なだけなので栃木県の足尾銅山にした。谷中村滅亡史を読んだから。途中の市にもなるべく寄った。二度と行くことのないだろう街に寄る。

 

館林市

高速道路を館林で降りる。館林市群馬県だった。たぶん大きな街なのだと思う。日清やカルピスの工場がある。働く人がたくさんいるから飲み屋も多い。スナックとかパブみたいな店がたくさんある。当然昼はやっていない。駅では何かの催しがあってテレビの撮影をしていた。地方テレビだろうから何だか知りようがない、と話したけれど、帰って調べたらカルピスラッピング電車のデビュー式典だったらしい。その気になればネットですぐに分かってしまう。そういう時代なのだ。

 

すごく古い感じのパチンコホールがあったので千円分打ってみた。パチンコのルールを知らないので後輩に教えてもらう。基本の左打ちさえ難しい。小当たりした後輩が出玉をこっちに回してくれる。たぶんやってはいけない気がするけれど、店員も何も言わない。客は高齢の人が多い。パチンコ屋なのに静かな感じがする。いくつかの台は撤去されてベニヤ板が貼られていた。

 

茂林寺という「ぶんぶく茶釜」発祥の寺に寄る。「ぶんぶく茶釜」を知らない後輩にあらすじを伝える。境内にはタヌキがいっぱいいた。最近作ったのかと思ったら、古い写真にも写っている。古式ゆかしいタヌキ寺。

 

 

 

 

 

 

足利市

栃木県に入ったらすでに昼過ぎだった。足利市の駅前。日本最古の学校(足利学校)があったけれど、時間がないので外から見た。昼はラーメンを食べた。驚くほどおいしかった。遠くまで来ているのでおそらく二度と食べることはできない。地下道を通る。知らない街だと地下道さえ通ってみようかという気になる。誰もいない。地上を信号で渡れるのだから当然だと思う。旅情のための地下道。

 

 

 

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佐野市

車中で名所らしきものを探す。運転は後輩がしてくれる。磯山弁財天に向かった。隣にある石灰工場みたいなものに夢中になってしまう。やってるのかどうか分からない。一角に子供のための広場があった。先代あたりが作ったという感じ。気持ちは残っている。時間がどんどんなくなる。社は崖の上にあった。

一乃館というホテルでビールとメロンソーダを飲んだ。古い喫茶店に入るとメロンソーダを飲みたくなる。何かの記憶とかイメージが喚起されるのだと思う。それはもう具体化できないのだけど。どこもブリキのおもちゃだらけだった。オーナーの趣味らしい。

 

 

 

 

 

 

栃木市

夕方。足尾銅山が目的なのに暗くなってしまう。途中の市を諦めることにした。栃木市鹿沼市宇都宮市栃木市の岩船山を遠景から見た。山頂に寺か何かがあるらしい。駅前を車で一周だけした。

 

日光市(足尾)

足尾は合併で日光市になっている。知らなかった。着いたときに夕方のチャイムが鳴っていた。人を強制的に寂しい気持ちにさせるメロディー。たぶん、友達と遊んでいて、間もなく帰らないといけないときの気持ちが染みついているのだろう。大きなヒットを打つのなら急がなければならない。

 

市内には遺構が点在している。変電所はまだ使われていた。謎のレール。山の上に塔があって、昔は運搬用のケーブルが張られていたというから関係があるのだろうか。平屋の市営住宅が妙に多かった。住んでいる雰囲気のある家は少ない。一両編成の電車が走っていた。車内から写真を撮る。

 

多くの遺構はたぶん観光資源ではなく、使われてもなく、ただそこにある。時間が経てば崩れ、危険があればその前に撤去される。ただ順番待ちの列が長いだけ。帰りがけの観光駐車場で中学生くらいの子がボール投げをしていた。考えてみれば、足尾で見た人はその子たちだけだった。あらゆるところで子供は明るい。僕もそうだったとも言えるし、それが希望だとも言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

薄汚い街だけ好きなのかもしれない

年度末で色々あって人と会ったりはできない。仕事が色々で、他に気を向けられないのでは、何だか本末転倒な気もしてしまう。

 

月曜日

毎日通る道はどちらかというと薄汚い繁華街で、自転車が街路樹のツツジにめり込んで止められていたりする。それでも蒲田で見た放置自転車が完全に歩道をふさいでいる様や、川崎駅前で自分の自転車に倒れ掛かった別の自転車を壊そうとしていたおじさんに比べると何ということはない。何かの花が咲いていた。ツバキだろうか。薄汚い街で花が咲いていると違和感があるようだけど、土と水さえあれば咲くのだからどうということもない。その違和感はこちらの勝手な思い込みから生まれてくるものだ。

 

 

火曜日

雨の朝の中華街を歩いた。雨の日の早朝はほとんど誰もいない。看板が出しっぱなしだったり、うっかり電灯がついていたりもする。どちらかというと小さい道のほうにその傾向が強い。大きな通りはいくらか整然としている。

 

異動がないということがわかった。1年間、異動を心待ちにしていたので動揺する。上司から説明のようなものを受けた。リクルートエージェントかなと思う。何とも面倒くさいけれど。やりたい仕事を探すためには、やりたい仕事があるのかを考えなければならない。

 

水曜日

村田紗耶香「マウス」を読んだ。小学生の女の子が周りに合わせてどうこうとあらすじにあったので、いじめの話かと思って家にあるのに読んでいなかった。そういう話ではなく、むしろ爽やかな話だった。「コンビニ人間」と随分違う。

 

 

木曜日

ビルが壊されているのを見た。期間限定て好きですか。あるビルが壊されると、隣のビルの側面が衆目にさらされる。このビルの側面は、本来人目につくことを意図していないことが多い。変なところに窓があったり、タイル張りが途中で終わっていたりする。そういうのは写真に撮ってみたくなる。つまり僕はけっこう好きです。

 

内田樹「コモンの再生」を読む。内田樹の本はけっこう持っているのだけど、韜晦した自己顕示が鼻につくなと思って読みたくなくなる時期がある。それでも久しぶりに読むとおもしろい。家族や社会を前提にしない個人を想像するのはやはり難しい。英米とは文化的な成り立ちが違う。ひろゆきともたぶん違う。

 

 

金曜日

職場の上司に別室に呼ばれる。腐らず、かつ今の仕事を続けるよう言われる。条件面で配慮してもらえたので何だか申し訳ないような気持ちになる。つまり説得はされる。転職も考えてはいる。考えてはおきたいところ。600万円見込みとチカチカする色合いに驚かされるバス運転手募集の広告。時代は変わりつつある気がする。

 

土曜日

キジが家の前を歩いていた。遠慮する素振りはない。鳥に先住権があるとも言える。こいつの娘(幼鳥)が飛んできて、ウチの壁にぶつかって死んだ。責任の一端は感じる。かつてそこに壁はなかった。プールで泳ぐ。平泳ぎの仕方を教わったけど、手前で股関節の柔軟性が足りない。そんな動きは取れない。泳ぐのは疲れる。痩せるだろうか。明日は栃木まで行く予定でいる。