工場夜景(磯子)

職場からバスで磯子の工場夜景を見に行けることに気が付いた。バスは今まで見たことのない住宅地や商店街を通り抜けた。背の後ろには子供を抱いたお母さんがいて、子を静かにさせようとずっと苛立っていた。どちらかと言えば席が譲られないことに責任を感じた。普通に考えれば僕は悪くない。でも果たしてそうだろうか。

 

磯子警察署というバス停から15分くらい歩くと夜景が見えた。1人で何もせずに夜景を見るのもなと思い、途中のコンビニでビールを買った。どこが工場に近いスポットか分からず延々と歩く。もっと良いところがあるかもしれない。寒くてビールを飲みながら歩こうとは思えない。

 

道中は街燈がまったくなかった。意図して設置していないのではないかというくらい。道はすごく暗くて、しっかり整備された道が真っ暗であることに不協和を感じる。何かのタンクがそびえ立つ。雲が、対岸の都会の明かりに照り映える。工場のなかではサーチライトの下に警備員が何人も立っていた。ほかには誰もいない。

 

結局、工場群の先端まで行った。そこは海釣り公園で、それ以上先は工業用地で入れないようだった。公園は夜中なので閉鎖されていた。そんなところまで行く必要はなかった。

 

帰り道にバスを待ちながらビールを飲んだ。バスは意外に本数があった。10分くらいバスを待っている間に、あらためて工場の夜景を眺めた。異様に寂しい光景だった。何が寂しいのかはわからない。すごい昔に見た光景のような気がする。思い出せる限りには、そんなことはなさそうだった。