トローチは薬効を感じさせる。甘くも苦くもない。少しだけスッとするけれど、それも結果的にそうなったのかなくらいの微かさ。遊びがない。

 

今のところ、そのトローチもあまり効いていない。風邪かなと思う。

 

通りかかる家からは順に、ルームフレグランス、入浴剤、夕食のカレーの匂いがした。喉が痛くても鼻はなんともない。

 

しばらく歩けば、どこかしらの家からはカレーの匂いがしますね。カレーは美味しいからなのだろう。そして今晩はカレーなのだと思うと、何かに許されたような気持ちになるから。

 

先週行ったバーの女の人はとてもいい香りがした。そしてとても素敵な笑顔だった。あれは「香り」だった。

 

下を向いたまま歩いていると、たまにジョギングしている人と不意にすれ違う。かなり驚く時もある。それなのにそれって他の誰が見ても分からないのだろう。そう思うと面白い。実は僕はけっこう驚いていたんですよ、と。

 

今日の夕食は豚汁だった。カレーは見知らぬ誰かの家の食卓に並んでいる。会うこともない。でも豚汁だってわりと捨てたものではない。