山下澄人という人が書いた「ギッちょん」という小説を読んだ。

 

夢の間にあるような話が多くて、何が実際にあったことなのか判然としなくなる。そもそも語りが一人称で、その人の視点が常に混乱している。

 

混乱している、という表現が正しいのかはよくわからない。どちらかというと、ある出来事を後から思い出したときに細部があやふやになっていたりする、それがとても大事な部分(人物とか出来事まで)にも及んでいる感じ。

 

結果的に読んでいる方は混乱する。

 

例えば、表題の「ギッちょん」は、主人公の子供の頃から死ぬまでを、時系列をバラバラにして断片で繋ぎあわせたような作りになっている(断片によっては何度も繰り返す)。「ギッちょん」は主人公の子供の頃の親友で、年を取ってからの主人公の前にも度々現れるのだけど、彼がそもそも実在していたのかさえよくわからない。

 

いたと言えばいたようだし、いなかったと言う方が確からしい気がする。

 

「ギッちょん」は主題だと思う。題名なのだから。それが実際にいたのかいなかったのかわからない。最後まで明言しない。

 

とてもおもしろい小説だった。この手の作り方をした小説で、技巧にはやって鼻につく感じにならないのはすごいと思う。

 

全部で4編の話でできている。間の2つは訳がわからないのを本気で受け入れないと楽しめないので、好き嫌いは分かれそうだけど、最初と最後はぎりぎり普通の小説として読めるはず。たぶん、ぎりぎりで。