昨夜は台風で激しい嵐だった。雨樋がたまに雨を処理しきれなくなったような、コポンコポン、という音を立てていた。遠くから波の音が聞こえた。ここら辺に住み始めた頃はその音が波だとわからなかった。ずっとザザザザ、と言っている。白黒テレビの放送終了後の砂嵐みたいな音だ。聞いたことはないけど、多分そんな感じ。外は嵐でも、意外に普通に眠れる。雨戸を閉めてしまえば、雨音はかすかに聞こえてくる程度。そのくらいの雨の気配は、むしろ眠くなる。毎日降っていれば、安眠が習慣になるかもしれない。

 

目が覚めたら、嵐のことはすべて忘れたように晴れていた。空は限りない青。でも、その辺を歩いていると、マンホールから水が逆流し、その辺を小川みたいにしていて、大雨をふいに思い出させる。海に行けば、台風で打ち上げられた途上国の木造漁船とかが見られるかな、と思った。実際に行ってみたのだけど、波濤はまだ高く、砂浜は洗われきって、木片一つ落ちていなかった。普段よりよほど綺麗なくらいだった。工夫のない映画のラストシーンみたいな波だった。太陽はじりじりと腕を焼く。タバコを1本吸った。それから帰った。何も変わったことはない。途上国の木造漁船は無事に係留されている。