割れる木

空が暗くなって、昼過ぎなのに急に夜がきたみたいで、SF小説ならば何かが起きる象徴的な場面になるな、と思っていたら大雨が降った。雷が落ちた。室内からの音と風景だけからするとお祭りのよう。

その後はすっかり晴れて、何事もなかった風情。

クリムトの名前が思い出せないことについて考えていた。「接吻」で調べたら何だかよく分からない画像がたくさん出てきた。戸惑った。確かに「接吻」はクリムトの独占的名辞ではない。

雷の落ちた場所は探せなかった。周辺の電気系統などに影響を与えていて、範囲が限定的なのだから、近くに落ちたのだと思うのだけど、痕跡は発見できない。ただ、雷がどのように落ちるのか、それを見て特定できるのか、僕は知らないし、案外すぐそばを通っていたのかもしれない。場合によっては、期待したものはそこにあった。そして、それに気がつくことができなかった。

そう言えば、大雨の降っている場所の空には積乱雲があるらしいから、遠くから見れば、多分僕たちはモクモクした雲に覆われていたのだろう。そこに雷が落ちて、しばらくして落ち着くと、何人かの人間が出てきて焦げ跡を探す。

探されていたものは雷の痕跡。まだ弱く降る、霧雨のなかで、割かれた木が煙を吹いている。実際には晴れていたのだけど。そして僕は何も見つけなかった。いつも通り。